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NUU レコーディング日記

nuunuunuu.exblog.jp

「デンシンバシラのうた」と「河童と蛙」



5月28日発売。NUUニューアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』のレコーディング裏話をちょっとだけレポート!


2008年5月28日にNUUの新しいアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』がリリースされます!アルバムのレコーディング風景やインタビューを記録スタッフがちょこっとお届けいたします♪

***
4月4日(金)のつづき

前日にレコーディングした「デンシンバシラのうた」にベースの音をプラスする。
参加してくださったのは、Bophanaの織原良次さん。使用したのはフレットレスベース。あるライブツアーで笹子さんと一緒に演奏をしたのがご縁で、今回初めてNUUのレコーディングに来てくださいました。

普段はジャズっぽい音楽がメイン…、という丸い顔に二カッとした笑顔が似合う織原さん。きっと彼のこれまでの人生で「デンシンバシラ」について唄う曲に自分のベースが入るとは想像だにしなかったでしょう…。
「デンシンバシラのうた」は、今回のアルバムの中では数少ない「夜」っぽい唄。織原さんのフレットレスベースが、夜の持つ空気の重さというか、しっとりとしたムードの目盛りを上げてくれる。NUUの”色っぽさ”に織原さんの音で磨きがかかる。
終わった後に、いかがでしたか〜、と伺うと、
「昨日、NUUさんと笹子さんで作ったこの曲をデータで送ってもらってて。聞いた時、もうすでに世界が出来上がっているから、自分はどうすればいいのか!どうやってここに入ればいいのかな?と少し不安だったけど、やれて良かった。楽しかった〜」
とおっしゃってお帰りになった。
お帰りになられたあと、NUUと私は「いや〜、エロい音だったねえ。かっこよかったねえ〜」と言い合った。
「デンシンバシラのうた」と「河童と蛙」_d0122500_17362712.jpg

ベースを弾く織原さんと笹子さん

そして、最後の一曲。「河童と蛙」

この曲は、NUUとパーカッションの渡辺亮さんの2人で作る。

渡辺亮さんは、NUUが昨年リリースしたアルバム『縫う』でもお世話になった。レコーディング直前まではっきりとした内容を決めずにNUUの心に浮かんだ言葉をその場で歌い上げる”即興”で作った曲「せっけん」で一緒に演奏をした方。あの時は、NUUが産み出す自由なリズムやメロディー、唄の空気をその場で素早く理解して、楽譜も何もない状態で必要な音を繰り出してゆく…、という神業を見せてくれた。NUUの音楽の持つ”気持ち”を素早く理解してくれるミュージシャンの一人です。
 笹子さんとも学生の頃からの長ーいお付き合いで、お互いの性格を知り、才能を知るお二人。彼がスタジオに到着すると笹子さんも心なしか楽しそうです。

そんな渡辺さんが演奏をしたのは「こどく」、「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」そして「河童と蛙」の3曲。

3つの曲についての説明を笹子さんとNUUが伝え、歌詞の書かれた紙を目にしたとたん、渡辺さんの心が「河童と蛙」に釘付けになった。他の2曲に対してもしっかりとプランを練って適切な音を選んで演奏して下さっていたけれど、「河童と蛙」に関しては歌詞(というか草野さんの詩)を目にすると、まるで吸い込まれるようにその詩に集中されてゆきました。

「僕、妖怪大好きなんで、河童の唄!すごい嬉しいです!」

そう。渡辺亮さんは、なんと”妖怪大好き人間”なのです。もちろん河童も例外ではありません。彼にそう言われて見てみると確かに片鱗が…。渡辺さんの持ってきたスリット・ドラムという楽器の側面には「水木しげる」「京極夏彦」「荒俣弘」など妖怪ファン業界では一流の方がのサインが!パーカッションだけでなく、イラストの腕も一流の渡辺さん。この日も河童が描かれたポストカードを見せてくださいました…。もう、まさにこの曲のために産まれてきたような方が担当することになったのです!

そして、渡辺さんは

「ちょっとこの曲は少し時間を下さい」

と言って、NUUが事前の録音した朗読と即興の唄をを聞きながら、「河童と蛙」の詩の書かれた紙を前に、ペンをもって考え始めました。言葉を追ってその世界観を自分の頭の中で作り、それにあう音を考える。そしてこりこりと紙に必要な楽器やタイミングなどを文字や絵で書き込み始めた。できあがった紙には詩のまわりにきれいな挿絵や模様が描かれているように美しく、みんなで「楽譜には見えないね!」と感動する。
「デンシンバシラのうた」と「河童と蛙」_d0122500_17361235.jpg

書き込みされた歌詞

「河童と蛙」は「つんつん つるんぶ つるんぶ つるん」という言葉の繰り返しの間に、ある月夜の沼に河童が現れる、という物語が紡がれてゆく詩。

どの楽器をどのようなタイミングで入れてゆくか。

という話をするために、NUUと渡辺さんと笹子さんは、詩のストーリー、場面の様子や背景の変化、河童の動き等について話し合っていました。

「ここでだんだん沼から河童が…」
「じゃあ、最初は首から上だけなのか?!」
「ここで踊りが一番盛り上がるんだとおもう」
「でも、まわりはしずかなんだ…」
「僕は河童の顔にだんだんカメラがよっていくようなイメージで」
「私は、広ーい場所の真ん中で、踊っているかんじかと…」

などなど、音楽のレコーディングというよりは、学校の学芸会の出しものの相談。といった感じです。踊る河童や、それを息をひそめて見守る生き物や、山々や、月について。一生懸命考えている。

この場に、草野さんがいない以上、正解というものはなくて。でもお互いのイメージを話し合ったり、アイディアを出し合ったりして、みんなで世界を作り上げてゆく。草野さんが残したヒントをもとに、一番いいと思う世界を、みんなの心をあわせて作る。

それは、すごく楽しそうで、見ていてわくわくする作業だった。

渡辺さんは「自分の頭の中で映画みたいにこの物語が見えた」と言っていた。そして、河童の動きや風の音、草のしげみから聞こえる虫の声や水の音まで全て、パーカッションで表現して見せてくれたのだった。

実は、この「河童と蛙」という詩は、
NUUがこのアルバムを作るきっかけとなった最初の一歩となった詩だった。
(その話は後日、詳しく届けします!)

草野さんが紙に書き、NUUだけでなく、沢山の人が詩集や教科書のページで出会い、口ずさんできたこの詩。この詩がなかったら、このアルバムは存在しなかった。

そんな「河童と蛙」

それが、曲に仕上がったところで、
アルバム「つんつん つるんぶ つるんぶ つるん」
全ての曲の録音が終わった。

つづく
by recdiary | 2008-05-20 17:41
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