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NUU レコーディング日記

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草野心平記念文学館ライブ その1

5月28日にリリースされたNUUの新しいアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』!もう聞いて頂けましたか〜?!

このアルバムのレコーディング風景やインタビューを記録スタッフがちょこっとお届けしております♪


***
5月11日(日)
朝、鍵盤ハーモニカ奏者の夏秋さんと、二人で電車に乗って、NUUの待つ福島県いわき市へ向かいました。

私達が出発した東京のお天気は雨。いわき市に到着すると肌寒い曇り空でした。迎えてくれたのは、NUUのマネージャーさんの酒井さんと、いわき芸術文化交流館アリオスの前田さん。前田さんは、このアルバムの企画からNUUと二人三脚でやってきて下さった方。5月9日、10日、11日、いわき市にある草野心平さんの生家や、商店街でのNUUのライブも前田さんとの共同作業。彼女の力なくしてはこのアルバムは産まれなかったかも!というくらい、バイタリティーのある女性です。

そんな前田さんの運転する車に乗って、約20分。NUU、笹子さん、夏秋さん、酒井さん、そして私はいわき市立草野心平記念文学館に到着しました。

文学館に入った瞬間

「すごーい!!」

と声が出てしまう。

それはそれは、美しい場所なのです。

文学館の玄関を入ると広いエントランスがあり、その奥にまっすぐ進むと、今回のライブ会場となるスペースが。
ライブスペースの突き当たり、つまり壁の部分が全てガラス張りになっていて、外の景色がそのまま建物の中にとけ込んでいます。

お客さんは、NUUの唄う姿の後ろに、自然の景色を見る事ができる。刻々と動いてゆく雲や、揺れる木々や、じわじわと山を覆う靄や、それがまた晴れてゆく様子を見ながら、NUUの唄が聞けるのです!なんという贅沢空間。(文学館のHP内、トップページの写真を見て頂けると、雰囲気が伝わるかもしれません… http://www.k-shimpei.jp/ )

「私が、お客さんになりたいよ〜。すごーい気持ちいい」

とNUU。
ダメですよ。お客さんはあなたを見に来るんだから。

そして早速リハーサルスタート。

もともとこのスペースはライブ会場ではないので、音の響きや広がり方が音楽専用の場所とちょっと違います。エンジニアの岡田さんとNUU、笹子さん、夏秋さんでお話をしながら、少しずつベストの音環境を作ってゆきます。

「ここはライブスペースじゃないから、唄えません」

って言うことだってできる。でも、こうしてみんなで力をあわせれば、
ちゃんと不可能は可能になる。みんなが”どうしたら、できるだけ良い音をお客さんに届けられるかな”と考えて、努力すれば、可能。落ち着いて対処するNUUを見ていて、これも10年の積み重ねだなあ、と感じた。NUUは、ライブスペースだけでなく、カフェや、幼稚園や、パン屋さんや、旧い日本家屋等、色々な場所でライブをしている。喜んでくれる顔が見える、色んな場所で唄っている。その1回1回の経験が、今の自信に繋がっているはず。ここだ、と思った場所を、ライブスペースにしてしまうNUUのかっこよさを感じました。

続いて、コーラス隊のリハーサル。

今回のライブでは、ニューアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』に収録される8曲を全て披露する。その中には「十四人以上の人物が同時の唱ふべき詩」という詩もある。というわけで、地元の方にご協力を依頼し、パワフルな前田さんのお声がけで唄ってくださる”蛙”コーラス隊が結成されたのです!

楽譜の読める方。読めないけれど、隣の人の歌声を耳で覚えてしまわれる方。唄が上手な方、唄が……自分流の方。色んな方がいらっしゃいました。でも、数回のリハーサルでバッチリOK。少しだけお話を伺うと「楽譜を渡されたときは、こんな曲が唄えるかな〜?と不安だったけれど、NUUさんがリラックスさせてくれたので、大丈夫でした。本番が楽しみ」
「地元で育って、草野心平さんが作詞した校歌のある学校にも通っていたので、こういったイベントに参加できるのは嬉しい」
と口々におっしゃっていた。
そんなコーラス隊のみなさんが持つ楽譜。みなさんお揃いの緑色のカバーをつけている。
これもスーパーウーマン前田さん作だという!!「紙がバラバラすると美しくないでしょう」と、作ってくださったそうだ。なんていう細やかさ。忙しい時間の中で、いいステージにする努力を惜しまないスタッフの姿勢が、こういう所からも見えてきました。いいライブになりそう!

私は、リハーサルの間に文学館の中をちょこっと見学させて頂く。草野心平さんの人生や、作品を、色々な形で知る事ができる面白い展示方法です。直筆の原稿が並んでいたり、親交のあった方との書簡を読めたり、草野さんがやっていらっしゃった居酒屋「火の車」が再現されたお店があったり…。草野さんの詩の世界を歩きながら立体的に楽しめる。また、私がお邪魔した時には企画展で絵本「ごびらっふの独白」(草野心平/詩 いちかわなつこ/絵 斎藤孝/編 ほるぷ出版)のいちかわなつこさんの原画展が催されていた。
草野さんの力強い言葉と、いちかわさんの描くかわいらしく、のびのびと動き回る蛙の表情が素晴らしくて、じっくりと見てしまった…。素敵な文学館です。


そしてそして、ついに本番。
幸せなことに、会場がほぼ満席となる100名近いお客様が来場して下さいました。

ライブは前半が、NUUのオリジナル曲。そして後半が今回のアルバム収録曲を初お披露目する。という構成です。

「昨年、文学館に来た時に、ここでライブやれたらいいな〜、と思っていたから、嬉しいです…」

と、ライブは始まりました。
前半は自分の唄をのびのびと。NUUのお友達の子供の1歳の誕生日に産まれた唄「小春」の時には、お子さん連れのお母さんが一緒に口ずさんだり、涙をぽろりとこぼされたり。会場がNUUの声でだんだん一つになってゆきます。

唄うNUUの後ろには、大自然。
ライブの間にも、雲は少しずつ動き、空が明るくなったり、木の葉がゆれたり。この場所だけの、そして、この瞬間だけの、神様が作ってくれた自然の風景が動いている。白いワンピースに、虹色ショールのNUUは、本当に嬉しそうだった。

そして、後半。草野心平記念文学館で、最初に披露した草野さんの詩は「河童と蛙」。

小学校3年生のNUUが父兄参観日に読んだものと、同じ詩です。

暗記をし、フシをつけて、内容にあわせてちょっと体を動かしながら。

それはまだ、NUUには、NUUという名前もなく、将来ステージに立って唄うなんて誰も知らない頃。

マイクに向かう彼女を見ていたら、人生ってちゃんと繋がっていて、意味があるんだなあ。と少し感動してしまう。

曲順は、アルバムと同じ。そして3曲目「百姓といふ言葉」という詩の途中で、NUUが、歌詞を、間違えました。

演奏を止めて、もう一度最初から!と言って唄いなおすNUU…。

私は、7年程彼女のステージを見ていますが、NUUが歌詞を間違える、というのを、産まれて初めて見ました…。本人もかなりびっくりしている様子です。この詩は野菜の名前が40種類くらい出てきますから、とても覚えにくいんです。見ているみんなも、間違えたことよりも、2回目でちゃんと唄えたことに拍手。無事に終えました。

その後、コーラス隊のみなさんが参加する「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」は、想像以上にぱりっと決まって、みなさんかっこいい!笹子重治メロディーを数日のリハーサルで唄いこなせるなんて!天才です。

「デンシンバシラのうた」も、「婆さん蛙ミミミの挨拶」も、唄ってしまうと、あっという間。短い時間です。でも、言葉一つ一つが、心にしゅっと吸い込まれてゆく。草野心平さんの詩が持つ力が、唄にのって、皆さんのこころに届いてゆく…。

最後の一曲は、再びコーラス隊の方が入られて「鰻と蛙」。蛙の大合唱が、ホール全体に響いて、大感動のうちに、終了となりました。

ライブの後。
NUUはちょこっと(ちょこっとですが)、落ち込んでいました。

「百姓といふ言葉」を間違えてしまったからです。
一番間違えちゃいけないところで、間違えちゃった…。
はあーっとためいき。

彼女を見ていて、もし自分が彼女の立場だったら、同じようにがっくりしたりするなあ、もう一回やり直したい!と思ったりするだろうなあ、と思った。

でも、なんとなく。
これは、草野さんからのプレゼントのような、そんな気がした。

お酒を片手ににやりと笑う、草野さん。

「だろう?だからいったろう?あこがれになるのは、難しいんだよ」

と。

この日、NUUのこれまでの歌手人生で、初めてのことがいっぱいあった。
あまり唄い込んでいない、新曲8曲をまとめてステージで披露するのは、これが初めてだったし、
それが全部他の人が書いた詩だ、というのも初めてだった。
そして、こんな風に間違えちゃったのも、初めてだった。

でも、これまでの10年が今のNUUを作ったように、この一日も、これからのNUUを作る1ページなんだと思う。

新しい扉が一杯開いたライブだった。

つづく
by recdiary | 2008-06-03 15:06
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