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NUU レコーディング日記

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ミックスダウン

ついに明日リリース!
NUUニューアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』のレコーディング裏話をちょっとだけレポート!


アルバムのレコーディング風景やインタビューを記録スタッフがちょこっとお届けいたします♪

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アルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』のミックスダウン(録音した素材の”音”のバランスを整えたり、加工したりして、皆さんにお届けする”音”に作り上げる作業です)は、2日間に渡って行われました。
まず、4月8日(火)。
笹子さんとNUUの立ち会いのもと、「河童と蛙」「秋の夜の会話」「こどく」「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」「デンシンバシラのうた」の5曲を作る。
ミキシングエンジニアは、今回のレコーディングの最初からずっと付きっきりでやってくれていたスタジオハピネスの平野さん。
いつも楽しい事にぴょん!と反応する、じっとしていられないタイプの平野さんは、レコーディング中もひょいひょいと軽やかに動き回って、色んな仕事を同時に進めてゆく(電話でしゃべってたと思ったら、猫と遊んでて、そうかと思ったらお菓子を食べてて、気がつくとしっかり音のバランスをとっていた…みたいな)見ていて面白い人だ。
ミックスダウンでも、NUUとミュージシャン達が表現した”たのしい空気”や”気持ちのいい音”の瞬間瞬間をひょいっと捕まえて、編み上げてゆく…。NUUのこれまでのアルバムでもスタジオハピネスには、お世話になっていたけれど平野さんがミックスダウンを担当するのは今回が初めて。今までのアルバムとは違う、軽くてキュートな”平野さん”風味が加わった。

この日。
ミックスの合間、時間をみつけて少しだけ笹子さんにお話を聞いた。

「最初、NUUからこのアルバムのレコーディングします!という連絡が来たときは、こんなタイトなスケジュールじゃできないだろう、って思ったけど……できましたね」

と笑った。話が来た時、すでに4月のスケジュールが埋まっていた笹子さん。「4月は5日間しかあいていません」と返事をした。
すると偶然か必然か、NUUが指定してきた日程と、笹子さんの空いていた日程がピタリ!と一致。これはもう、やるしかありません。

「普段のNUUのアルバムではなくて草野心平さんとNUUの”企画アルバム”なのだから、遊びを入れて作ったらいいんじゃないか、と思ってて。いつもならやらないことをいくらか入れてみました。「こどく」では、自分でコンチェロを弾いたり…。もっと上手い人に弾いてもらったっていいんだけど、あえてちょっと”おもちゃ”っぽい音を入れることで雰囲気を出したり。「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」では、普段NUUに作曲を頼まれても絶対にやらないような、うるさいくらいにリズミカルな曲を作ってみたり。面白かったですよ」

笹子さんは、”僕はあんまり考えてませんよ…”なんておっしゃるけれど、実は音楽のこと、レコーディングの細かいスケジュール(どのミュージシャンにどのぐらい時間がかかるか?NUUの唄入れやミックスダウンのスケジュール、どのぐらい続けて作業すると疲れてくるか、など様々)に関してはしっかりとしたビジョンがあるように見える。自分よりもずっと若いNUUというアーティストを本当にきちんと扱っている。無駄にいばったり、口を出したりすることもなく、本当の意味での”共同プロデュース”を実践している。

そして、お話を聞くうちに、笹子さんは自分の気持ちを少しだけ話してくれた。

「自分はずっと洋楽をやってきたんですよ。ギターっていう洋楽の楽器を使って、洋楽を学んできた。でもNUUと出会ったことで草野心平さんであったり、植木等さんであったり、日本のアーティストとも出会う事ができて…。NUUとの仕事をすることで、自分でも気付かなかった新しい引き出しを開けることができる。これは普段の”自分が選ぶ仕事”では、絶対に得られない経験なんですよね。やるチャンスのなかった仕事と巡り会えるのは、NUUのおかげだと、思います」

私は、笹子さんからこの話を聞いた時、録音をしていない。メモ書きもほとんどしていない。でも、しっかりとこの言葉が残っている。人が、本当に気持ちを込めて言った正直な言葉は、録音機よりも鮮明に人の心に残る。笹子さんが人とおつきあいをする時の姿勢とか、心意気が伝わってくる一言だった。

続いて、4月13日(日)。
この日は「百姓といふ言葉」「婆さん蛙ミミミの挨拶」「鰻と蛙」の3曲をミックスダウンして、曲と曲の間の空白の時間をどのぐらい入れるのかなどのタイミングを決めて、最終的なアルバムに仕上げます。

集合したのは、NUU、笹子さん、夏秋さん、パーカッションの中北裕子さん。アルバムの作業を始める前、4人は6月21日、22日の「NUUうまれた日ライブ」についての打ち合わせを始めた。
NUUのデビュー10周年を記念した2日間ライブ。なんとNUUは、これまで自分がリリースしてきた楽曲を2日間で全部唄おうとしていた!どの曲をどちらの日にやるのか?どんなアレンジにするのか?笹子さんが参加する21日と夏秋さん、中北裕子さんが参加する22日とでは、かなり雰囲気も違いそう!楽しそうにワクワクとしながら打ち合わせをしていましたよ!あの曲も、この曲も、全部やりますよ〜!!ちょっとシックな笹子さんチームと、バンドでわいわい夏秋さんチーム。どちらも楽しそう!すごい唄がきけそうな2日間だ…と、うずうずしながら聞いてしまいました。

そして、この日のミックスダウンのエンジニアは荒井さん。平野さんとは正反対(?)で、もの静かに、もくもくと作業を進められる方。人の話を聞いて、一つ一つ手を動かして作ってゆく。信頼できる職人さん、という風情の荒井さん。平野さんとは違った美しさのある曲作りを見る事ができました。

最後に、朗読「婆さん蛙ミミミの挨拶」に、ほんの少しだけカリンバの音を足すことになり、夏秋さんがスタジオに入る。ほんとに一音。ピリン、と。音楽の足し算引き算のバランスって本当に面白い。みんな息をのんで、その音を聞いた。

そして全ての曲を整えて、全部の曲間を決めて、ついにアルバムは完成!
本当にスケジュールが駆け足でしたが、期間が短い分、内容が濃く、参加している人がみんな集中していたレコーディングが、これにて終了となりました。

もちろん、そうなると思って作っていましたはずですが、出来上がった時、みんなで改めて
「いいアルバムできたねえ…」
と言い合っていた。

完成したこのアルバムが、明日リリースとなります。

ぜひぜひ、みなさんに手にとってもらいたい。
かわいいジャケットも見てもらいたい。
詩、一つ一つを味わってもらいたい。
感想も聞きかせていただきたい。

みんなが手塩にかけて作った一枚です。
どうぞよろしく。

次回は、
5月11日に福島県いわき市草野心平記念文学館で行われた
アルバム発売記念ライブの模様をお届けします!

つづく
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by recdiary | 2008-05-27 05:00

「デンシンバシラのうた」と「河童と蛙」



5月28日発売。NUUニューアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』のレコーディング裏話をちょっとだけレポート!


2008年5月28日にNUUの新しいアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』がリリースされます!アルバムのレコーディング風景やインタビューを記録スタッフがちょこっとお届けいたします♪

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4月4日(金)のつづき

前日にレコーディングした「デンシンバシラのうた」にベースの音をプラスする。
参加してくださったのは、Bophanaの織原良次さん。使用したのはフレットレスベース。あるライブツアーで笹子さんと一緒に演奏をしたのがご縁で、今回初めてNUUのレコーディングに来てくださいました。

普段はジャズっぽい音楽がメイン…、という丸い顔に二カッとした笑顔が似合う織原さん。きっと彼のこれまでの人生で「デンシンバシラ」について唄う曲に自分のベースが入るとは想像だにしなかったでしょう…。
「デンシンバシラのうた」は、今回のアルバムの中では数少ない「夜」っぽい唄。織原さんのフレットレスベースが、夜の持つ空気の重さというか、しっとりとしたムードの目盛りを上げてくれる。NUUの”色っぽさ”に織原さんの音で磨きがかかる。
終わった後に、いかがでしたか〜、と伺うと、
「昨日、NUUさんと笹子さんで作ったこの曲をデータで送ってもらってて。聞いた時、もうすでに世界が出来上がっているから、自分はどうすればいいのか!どうやってここに入ればいいのかな?と少し不安だったけど、やれて良かった。楽しかった〜」
とおっしゃってお帰りになった。
お帰りになられたあと、NUUと私は「いや〜、エロい音だったねえ。かっこよかったねえ〜」と言い合った。
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ベースを弾く織原さんと笹子さん

そして、最後の一曲。「河童と蛙」

この曲は、NUUとパーカッションの渡辺亮さんの2人で作る。

渡辺亮さんは、NUUが昨年リリースしたアルバム『縫う』でもお世話になった。レコーディング直前まではっきりとした内容を決めずにNUUの心に浮かんだ言葉をその場で歌い上げる”即興”で作った曲「せっけん」で一緒に演奏をした方。あの時は、NUUが産み出す自由なリズムやメロディー、唄の空気をその場で素早く理解して、楽譜も何もない状態で必要な音を繰り出してゆく…、という神業を見せてくれた。NUUの音楽の持つ”気持ち”を素早く理解してくれるミュージシャンの一人です。
 笹子さんとも学生の頃からの長ーいお付き合いで、お互いの性格を知り、才能を知るお二人。彼がスタジオに到着すると笹子さんも心なしか楽しそうです。

そんな渡辺さんが演奏をしたのは「こどく」、「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」そして「河童と蛙」の3曲。

3つの曲についての説明を笹子さんとNUUが伝え、歌詞の書かれた紙を目にしたとたん、渡辺さんの心が「河童と蛙」に釘付けになった。他の2曲に対してもしっかりとプランを練って適切な音を選んで演奏して下さっていたけれど、「河童と蛙」に関しては歌詞(というか草野さんの詩)を目にすると、まるで吸い込まれるようにその詩に集中されてゆきました。

「僕、妖怪大好きなんで、河童の唄!すごい嬉しいです!」

そう。渡辺亮さんは、なんと”妖怪大好き人間”なのです。もちろん河童も例外ではありません。彼にそう言われて見てみると確かに片鱗が…。渡辺さんの持ってきたスリット・ドラムという楽器の側面には「水木しげる」「京極夏彦」「荒俣弘」など妖怪ファン業界では一流の方がのサインが!パーカッションだけでなく、イラストの腕も一流の渡辺さん。この日も河童が描かれたポストカードを見せてくださいました…。もう、まさにこの曲のために産まれてきたような方が担当することになったのです!

そして、渡辺さんは

「ちょっとこの曲は少し時間を下さい」

と言って、NUUが事前の録音した朗読と即興の唄をを聞きながら、「河童と蛙」の詩の書かれた紙を前に、ペンをもって考え始めました。言葉を追ってその世界観を自分の頭の中で作り、それにあう音を考える。そしてこりこりと紙に必要な楽器やタイミングなどを文字や絵で書き込み始めた。できあがった紙には詩のまわりにきれいな挿絵や模様が描かれているように美しく、みんなで「楽譜には見えないね!」と感動する。
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書き込みされた歌詞

「河童と蛙」は「つんつん つるんぶ つるんぶ つるん」という言葉の繰り返しの間に、ある月夜の沼に河童が現れる、という物語が紡がれてゆく詩。

どの楽器をどのようなタイミングで入れてゆくか。

という話をするために、NUUと渡辺さんと笹子さんは、詩のストーリー、場面の様子や背景の変化、河童の動き等について話し合っていました。

「ここでだんだん沼から河童が…」
「じゃあ、最初は首から上だけなのか?!」
「ここで踊りが一番盛り上がるんだとおもう」
「でも、まわりはしずかなんだ…」
「僕は河童の顔にだんだんカメラがよっていくようなイメージで」
「私は、広ーい場所の真ん中で、踊っているかんじかと…」

などなど、音楽のレコーディングというよりは、学校の学芸会の出しものの相談。といった感じです。踊る河童や、それを息をひそめて見守る生き物や、山々や、月について。一生懸命考えている。

この場に、草野さんがいない以上、正解というものはなくて。でもお互いのイメージを話し合ったり、アイディアを出し合ったりして、みんなで世界を作り上げてゆく。草野さんが残したヒントをもとに、一番いいと思う世界を、みんなの心をあわせて作る。

それは、すごく楽しそうで、見ていてわくわくする作業だった。

渡辺さんは「自分の頭の中で映画みたいにこの物語が見えた」と言っていた。そして、河童の動きや風の音、草のしげみから聞こえる虫の声や水の音まで全て、パーカッションで表現して見せてくれたのだった。

実は、この「河童と蛙」という詩は、
NUUがこのアルバムを作るきっかけとなった最初の一歩となった詩だった。
(その話は後日、詳しく届けします!)

草野さんが紙に書き、NUUだけでなく、沢山の人が詩集や教科書のページで出会い、口ずさんできたこの詩。この詩がなかったら、このアルバムは存在しなかった。

そんな「河童と蛙」

それが、曲に仕上がったところで、
アルバム「つんつん つるんぶ つるんぶ つるん」
全ての曲の録音が終わった。

つづく
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by recdiary | 2008-05-20 17:41

こどく

5月28日発売。NUUニューアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』のレコーディング裏話をちょっとだけレポート!


2008年5月28日にNUUの新しいアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』がリリースされます!アルバムのレコーディング風景やインタビューを記録スタッフがちょこっとお届けいたします♪

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4月4日(金)

の前に、まず4月3日(木)の続きから…。
「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」の唄入れが終わった後、その日最後の作業となる「デンシンバシラのうた」という詩の、ギターと唄の録音をした。

ちょっと前まで「音がどうしてもわからない…」と悩み続けていたNUUが、この曲は全然大丈夫〜、と鼻唄まじりに嬉しそう。なぜなら、この曲は彼女から産まれたメロディーをつけたから。もう、この曲は彼女の体に入っているからだ。

今回のアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』に収録される詩は8編。その内、NUUが産曲を担当したのは2編。普段のオリジナルアルバムよりもNUUがメロディーを産んだ曲が少ない分、この曲では、彼女の個性の輪郭がはっきりとしているように思う。「デンシンバシラのうた」は特に、NUUの持つ色っぽさというか、体からあふれるような抑揚が感じられて、他の曲との違いが楽しめる一曲。
笹子さんのいつもながらに鮮やかですっきりとしたサポートで、唄を入れ終えて、この日は終了となった。

そして、4日(金)。

この日最初のレコーディングは「こどく」という詩。

今回のアルバムのためにNUUが選んだ草野心平さんの詩の中で一番短い。3行。29文字。たったそれだけのひらがなだけで、風景を描いている。

この詩が発表されたのは、大正時代。でもここで描かれる風景は、平成時代に生きる私達にも全く違和感なく見えてくる。そのことからも、考え抜かれて、選ばれた”3行”だ、と感じる。


今回、草野心平さんの詩をNUUのアルバム作りと共に見てゆくことで、”詩人”という職業の素晴らしい技術の数々を実感する事ができた。

ひらがなを使うか、カタカナを使うか、

それとも漢字を入れるか、アルファベットか。

どのくらい言葉と言葉の間に”空間”をつくるか。

何行にするか。

句読点を打つのか、全部繋げるか。

すべて、考え抜かれて、使われている。


「こどく」を声に出して読んでみると、読むスピードが自然と遅くなる。読んでいるだけで、自分の呼吸がゆっくりになるような、そんな世界が描かれている。

この詩の作曲担当は、笹子重治さん。
彼が「こどく」という作品の風景を音で表現するために選んだパートナーは、笹子さんがリーダーを務める3人組弦楽ユニットCHORO CLUBのメンバー、バンドリン奏者の秋岡欧さん。

レコーディングが始まる前、秋岡さんはCHORO CLUBの長い歴史の面白話を色々と聞かせてくれました。まるで自然の音のような広がりのある世界を作り上げる3人組の、親子のような絶妙なバランスは、一日にして作られたのではないのだなあ…と改めて感動する。

そして、レコーディング。笹子さんは、秋岡さんに対して
「ま、アンビエントな感じで」
ぐらいの指示しか出していない。お互いが気になる事や、相手がやりたい事が、ほんの少しの言葉で通じる間柄。
また、NUUが笹子さんに
「この風景って、何時くらいだとおもいますか?」
と質問すると
「えーと、2時ですね!午後2時」
と、こちらも指示はひとこと。NUUと笹子さんもこのひとことで通じる間柄。
演奏が始まると、まるでここが海辺の午後2時になってしまったか!と思う程に気持ちのよい時間が流れ、2テイクで終了。結局1回目の録音がOKテイクとなった。

その後、パーカッションの渡辺亮さんが登場。
渡辺さんが自身が作ったオリジナル楽器「コンチェロ」を笹子さんが弾いて、できあがった「こどく」のメロディーにアクセントを加える。ベースのような音のこの楽器の「トン トン トン」という音が不思議に気持ちよく「こどく」の世界を盛り上げる。

最後に、渡辺亮さんのシンバルの音を重ねる。
詩とメロディーで出来上がった世界の中にパーカッションが入ると、その風景は一層具体的になる。空はもっと高く。木はより広々と葉を伸ばし、風はゆったりと流れる。

アルバムの中でも、ひときわ気持ちの良い一曲が、完成しました。

つづく
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by recdiary | 2008-05-13 14:18

第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌

5月28日発売。NUUニューアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』のレコーディング裏話をちょっとだけレポート!


2008年5月28日にNUUの新しいアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』がリリースされます!アルバムのレコーディング風景やインタビューを記録スタッフがちょこっとお届けいたします♪

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4月3日(木)

「秋の夜の会話」に続いて、「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」。

NUUが共同プロデューサーの笹子さんと選曲をしていた時、笹子さんから
「草野心平さんのイメージというと、やっぱり擬音のユーモラスさだと思うんです。思い切りそういう”音”が入った曲が一つあってもいいかもしれませんね」
という意見をもらい、NUUが選んだのが「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」。

いわゆる日本語…というのでしょうか、私達が普段使っている言葉は一切出てこない。「わひわひ」とか「ぎやるるろ」とか「ぐりけっぷ」という言葉が句読点も無く並んでいる詩。

草野心平さんは、この詩で並べられた音が、いったい何の音なのか?ということを、全く説明をしていません。
ですから、私達は「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」というタイトルから推測するしか、ないのです。


これは……

やはり……


蛙でしょう!!


ということで、蛙達の”歓喜の歌”を録音することになりました。


草野さんの言葉の世界は本当に広い。私達が”言葉”だと思っているものは、本当の”言葉”の持っている力の半分にも届かないように思えてしまう。言葉とか音。もっと沢山の種類や、使い方があるはず。と気がつく。


そんな蛙ソングの作曲を担当したのも笹子さん。
「NUUの普通のアルバムとは違いますから、イベントというか…。お祭りというか…。あまり”NUUが唄うから…”というのを意識しないで、この詩を見て自分から出てきた音に忠実に作りました」
とおっしゃった。

笹子さんという人の中には、こういう音が鳴っているのですね…。

驚きと、その素晴らしさに衝撃!の一曲です。
確かに、NUUのアルバムでは今まで聞いた事がないリズム。というよりも、私は今までの人生において、こんなに不思議で短い曲は聞いた事がありません。曲が始まってから、終わるまで、なんと49秒。

しかも、草野さんはこの詩に「十四人以上の人物が同時に唱ふべき詩」と但し書きを付けている。

この曲を選んだ当初、NUUは
「友達とかに声をかけて、一緒に唄ってもらえばいいかな〜」
と思っていたそうなんですが、曲が出来上がってきて
「………これは。普段から唄を唄ってない人だと、難しいかもしれない…」
と思い直した。そのぐらい不思議なメロディーなのです!

そこで、歌手の方やミュージシャンの方でご協力頂ける方にお声をかけ、コーラスレコーディングをすることになりました。

参加して下さったのは
石塚明由子さん(from vice versa)、ecoさん、兼村綾子さん、佐野遊穂さん(ハンバートハンバート)、田辺玄さん(from WATER WATER CAMEL)、戸田和雅子さん、西本さゆりさん(Ett)、のぐちひろしさん、三木千夏さん、見田諭さん、佐野岳彦さん

そして、谷川賢作さん、笹子重治さん、

それにNUUを入れて、合計14人。

いえ、実際は16人。
実は、参加された方のうち、2名が妊婦さんだったのです!それまでがらんとしていたスタジオの中に人がわんさかやってきて、賑やかにレコーディングスタート。4人ずつブースに入って唄ってゆきます。

事前にメロディーを渡して聞いて頂いていた、というのもありますが、皆さん、素晴らしいチームワークを発揮して、コーラスを唄いこなします。

全員が同じ音を、同じリズムで唄うので、少しリズムが遅れたり、音が外れたりすると、目立ってしまう。もし自分がこの中に入っていたら…と思うだけで冷や汗がでるような状況だったのですが、みなさん、堂々とすぱっと歌い上げてゆく。さすがプロ!!「難しいねえ」と言いながらも、マイクの前での素晴らしい集中力でスピーディーにレコーディングは終了。

そして、歓喜の歌に参加した”蛙コーラス隊”の皆さんは、

笹子さんの歌がきけて良かった。
妊娠10ヶ月の良い思い出になった。
いい子が産まれそう。
知り合いにいっぱいあえて楽しかった。
これでよかったのかなあ…?
お疲れさまでした。
NUUばんざーい!
蛙になれてよかった。
ワヒワヒでムキになった。
NUUちゃんの踊りが良かった。
NUUちゃんのお葬式みたいだった。
壮大でした。
笹子さんのトラックが素晴らしかった。


などなど、楽しそうに感想を述べて、帰ってゆかれました。


皆さんがいなくなった後、
NUUも、同じようにコーラスを入れを開始。

蛙コーラス隊のみなさんは、素早くメロディーを覚え、2、3回でスパッと決めてお帰りになられた…。

きっとNUUもあっという間だろう。と思っていたのですが。


想像以上に苦戦し始めました。ま、またもや?

「鰻と蛙」の時と同じように、NUUの中にある”何か”と、笹子さんが作ったメロディーが一致するまでに、時間がかかる…。私がびっくりしていると、笹子さんは「鰻と蛙」の作曲者、夏秋さんと同様に
「まあ、こうなると思ってましたら。掴んじゃえば大丈夫なんですけどね。でも面白いよね〜。音符のある世界の人じゃないからね。唄う時、普通の人が使うのとは違う能力を使って唄ってるんだよ、この人」
と、落ち着いている。

前回のアルバム『縫う』の時には、NUUの唄入れの瞬間をあまり見学できなかったのですが、後から聞くと「ものすごくスムーズだった」と言っていたし、彼女自身が産んだ曲だと2、3回唄うともう完成してしまう場合が多い。しかし、今回は苦労している姿が、何度か見えてきた。

いつもあれだけ気持ち良さそうに、のびのびと唄っているのに、不思議。

改めて、

NUUが唄うのは、音符があるからでも、楽譜があるからでも、楽器を弾くからでもなく、体から自然と出てきているからなんだ、

と、実感する。

もともと唄や音楽は、楽譜があったから出来た物ではなくて、先に唄があって、それを書き残すために後から楽譜ができたはず。彼女がプロフィールで”詩を書き、曲を産み、唄う人”という表現を使っていることに、納得がいく。曲を産む。というのは、作曲、という言葉とは、少し違うかもしれない。

なんてことを、私がふむふむと納得している間にも

NUU「できなーい…。もうやだ…。なんでかな〜」
笹子 「(ギターでポローン♪)この音ですから…」
NUU「もう、そのギターの音聞くと、へこむ〜」
笹子 「(気にせず)じゃあ、もう1回”ぐりけっぷ”からいきましょう」


という会話が、レコーディングブースと、オペレータールームの間で、繰り返されていました…。

最終的には、しっかり音がNUUの体に入り、蛙コーラス隊の皆さんからぴょこん!と飛びだす事なく、NUU”蛙”の声が美しく重ねられたのでした。

残すはあと、3曲!
レコーディングも終盤に入ります!!

つづく

***

このレコーディング日記でお届けしているアルバム『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』に収録される草野心平さんの詩をNUUが歌うイベントが5月11日に福島県いわき市で開催されます!!「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」当日はどんな風に唄われるのか!ぜひ自分の目で確かめてください!!


『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん 〜NUU、草野心平をうたう〜』

出演:NUU + 笹子重治(ギター)+夏秋文彦(ピアノ+鍵盤ハーモニカ)

日時:5/11(日)15:00開演(14:30客席開場) 
会場:草野心平記念文学館 いわき市
  (JR磐越東線「小川郷」駅より車で10分・駅から会場までの公共交通機関はございませんのでご注意下さい)
入場料:大人2,000円 高・高専・大生1,500円 小・中学生1,300円 (文学館観覧料含)

4月11日電話にて予約受付中!

ご予約:アリオスチケットセンター:0246-22-5800
    草野心平記念文学館   :0246-83-0005
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by recdiary | 2008-05-06 15:08